看護師のyukinoです。
あなたは、病棟で自殺未遂をする患者さんにあったことがありますか?
私は、1度だけ新人のころに勤めていた病棟で、自殺未遂をした患者さんがいました。
その時のことをお伝えしたいと思います。
自殺未遂をした患者さんがいた話
私が新人のころの話です。
その患者さん(Aさん)は、肝臓がんで状態も悪く、全身黄疸・浮腫があり、ひとりで動くことが困難になってきていました。
Aさんは、60代独身の男性で両親もすでに亡くなられていて、当院へ入院されるときは、甥っこさんに付き添われていました。
入院時、甥っ子さんに「迷惑かけてごめん。本当にありがとう。申し訳なかったね。助かったよ。」と何度も感謝の言葉をかけている姿が印象的でした。
その後、毎日Aさんとお話をしたり、看護をする中で、Aさんはとてもまわりに気を遣う人だということが分かってきます。
例えば、Aさんと話しているときに、PHSが鳴ったら「僕のことなんていいから、早くいってあげて。」と、自分より他者を優先します。
また、全身の浮腫により、歩行が困難だし、座位を取るのも難しくなっていても、私たち看護師の迷惑にならないようにと、用事があっても、ナースコールを押さず自分で頑張ろうとして、何度もベッドから落ちていました。
そのたびに「迷惑をかけてすいません。ごめんなさい。」と何度も謝ってくれました。
幸い、外傷はなかったので、「遠慮せずにナースコールを押してください」と伝えました。
「わかりました。」と言ってくれるのですが、なかなかナースコールは押してくれませんでした。
なので、離床センサーが導入されましたが、Aさんは認知症もなく、しっかりした方なので、強いストレスになり、離床センサーはなしになりました。
私は、そんな気遣いの達人であるAさんが好きで、よく時間を見つけてお話をしに行っていました。
少し、さぼりたい気持ちもありました。(笑)
Aさんは、ずっと顔は笑顔でしたが、辛そうな笑顔をしているのが印象的でした。
そして、何度目かの転倒のとき、Aさんは泣いていたそうです。
きっと、疾患によって出来ないことが増えていく不安・悲しみやまわりに迷惑をかけたくないのに迷惑をかけてしまう自分自身へのイラ立ち・失望などがあったのだと思います。
入院してから1か月くらいのある日、滅多にならないAさんからナースコールがありました。
詰所内にいた私は「珍しいな」と思いましたが、他のスタッフが対応してくれました。
次にスタッフコールがなり、Aさんの元へ駆けつけました。
すると、病室には取り乱しているAさんと、そのまわりには包丁、輪っかになったゴミ袋、遺書がありました。
包丁は病院へ来る前に寄ったところで、購入したようで、入院当初からカバンの中に持っていたようです。
輪っかになったゴミ袋は、ごみ箱の底に予備のごみ袋が用意されていて、それを輪っかに切っていました。
この、輪っかのごみ袋をベッド柵にくくって、首を通そうとしたようです。
しかし、いざやろうと決断した時、肘がナースコールに当たって、スタッフが訪室したという状況でした。
「生きていても意味がない」「自分で動けるうちに自分で死にたい」「これ以上みなさんに迷惑かけられない」という言葉を発していました。
その後、Aさんはとりあえず落ち着いて、包丁や危険なものはすべて撤去し、ナースコールもひもを柵に括り付け、外せない状態にしました。
Aさんは、自殺未遂後、一切口をきいてくれなくなりました。
スタッフの誰ともコミュニケーションをとることを拒否して数日過ごし、転院していきました。
上司や主治医、ご家族の間でどのような話になって、どこへ行ったのかはわからないままです。
どうしてもっと、AさんのSOSに気付けなかったのかと後悔しました。
辛そうな笑顔や転倒したことへの涙などに気付いていたのに、「死にたい」と思うほどの精神状態であることに気づけなかったんです。
きっと、Aさんは鬱状態で、精神的な関わりや治療が必要な状態だったのだと思います。
新人の私は、このまま看護師を続けていいのか不安になりました。
患者さんに寄り添うには?
この経験を通して、看護師として患者さんと関わるということは、ただ日常会話を患者さんとすればいいというわけではないということに気づかされました。
また、身体的な観察だけでなく、目には見えにくい精神的な部分の観察の必要性や難しさも学びました。
患者さんの置かれている状況、心の支え、家族の有無、楽しみ、など、日々の忙しい業務のなかでは、重要視しにくい面にも目を向けないんですよね。
そのためには、患者さんやご家族とコミュニケーションをとる時間を確保したいですね。
患者さんによって、考えていることや希望は全然違います。
患者さん本人と、ご家族の意見が異なっている場合もよくあります。
その考え方のすれ違いを、しっかりと聞き取れる看護師って、患者さんのための看護が出来ていると思うんです。
急性期の患者さんの命の危険を救う看護もめっちゃ大切だし、重要だと思いますが、慢性期・在宅の患者さんに寄り添う看護も大切です。
あなたは、患者さんの心に寄り添った看護が出来ていますか?
毎日の患者さんとの関わり方で、あなたに救われる患者さんが必ずいます。
患者さんに寄り添える看護師になりましょう!
まとめ
患者さんの自殺未遂を通して、患者さんに寄り添うことの大切さや、日々の関わり方について学びがりました。
この時は、運よく未遂でしたが、未遂で済まなかった可能性もあります。
患者さんの発言・表情から得られる情報もあります。
日々しっかり観察していきたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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